大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)105号 判決

一、原告の主張する請求原因第一項から第三項までの事実は当事者間に争いがない。

二、そこで、審決取消事由の有無について判断する。

(一) (取消事由(一)について)審決が、エチレングリコールモノエチルエーテルは他のアルコールと同様にエステル交換反応を行うと予測するのが技術常識であり、エチレングリコールモノエチルエーテルのようにエーテル結合をもつアルコールがエステル交換反応において他のアルコールと異なる反応性を示す根拠が見出せない、との理由で、エチレングリコールモノエチルエーテルと酢酸エチルとのエステル交換反応を行うことは当業者が容易に行い得るものと認められる旨説示したことは当事者間に争いがない。しかるところ、原告は、本願発明がその第二反応において採用した中間物質であるエチレングリコールモノエチルエーテルと酢酸エチルとのエステル交換反応は従来実施されたことのない新規な反応であり、何らの知見もなかつたから予測困難であつた旨主張し、被告は、審決の上記説示は正当である旨反論するので、以下、まず、この点について検討する。

本願発明が第二反応において採用した中間物質であるエチレングリコールモノエチルエーテルと酢酸エチルとのエステル交換反応が新規反応であることは当事者間に争いがなく、このエステル交換反応における生成物であるエチレングリコールエチルエーテルアセテートとエチルアルコールとが共沸物質を形成しないことは成立に争いのない甲第二号証および同第九号証から明らかである。そして、このような新規な反応が当業者において容易に行い得るというためには、その合理的根拠が示めされなければならないことはいうまでもない。

本件についてこれをみるに、審決は、エチレングリコールモノエチルエーテンと酢酸エチルとのエステル交換反応を行うことは当業者が容易に行い得るとする根拠として、エチレングリコールモノエチルエーテルのように分子中にエーテル結合を有するものであつても、そのエーテル結合に影響されることなく、他のアルコールと同様に、エステル交換反応を示すというがごとき積極的な根拠を示すことなく、ただ消極的にエチレングリコールモノエチルエーテルが他のアルコールと異なる反応性を示すという根拠が見出せないと説示するだけである。当裁判所は、このような説示を前記の合理的根拠を示したものとは考えない。けだし、審決のいう「他のアルコール」は、その前後の文脈に徴し、第二、第三各引用例(成立に争いのない甲第四号証の一・二、同第五号証)に記載されたアルコールを指すものと認められるが、ここに示されたアルコールはメチルアルコール、アミルアルコール等炭素鎖中に何らの異種原子の存在しない脂肪族のアルコールである。これに対し、本願発明の中間物質であるエチレングリコールモノエチルエーテルは、脂肪族アルコールとはいつても、分子中にエーテル結合、すなわち炭素鎖の間に酸素原子を有して上記アルコール類とはその骨格を異にするばかりでなく、この炭素鎖の間に存在する酸素原子によつて炭素鎖のみのものとは異なる反応性を示すエーテル結合がエステル交換反応において何らの作用をしないという保障はないからである。

(二) そうすると、審決がエチレングリコールモノエチルエーテルと酢酸エチルとのエステル交換反応を行うことは当業者が容易に行い得るものとしたのは、合理的根拠を欠く誤つた判断といわねばならない。したがつて、これを前提として本願発明の進歩性を否定した審決は、その余の点について判断するまでもなく、違法であり、取消しを免れない。

三、よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるから認容する。

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